なぜ従業員のSNS私的利用が経営リスクになるのか?
就業時間外の投稿でも勤務先の名前がひもづく
休日や就業時間外の投稿であっても、会社の名前と結び付けて受け取られます。SNSは投稿の中身だけでなく写真や交友関係から勤務先が推測される仕組みになっています。本人がプライベートのつもりでも、見ている側は社員の発言として読みます。
勤務先が割り出される手がかりは、本人が思っているより多く残っています。
- プロフィール欄や過去の投稿に書いた会社名と職種
- 制服や社員証が写り込んだ写真と店舗の背景
- 同僚や取引先アカウントとの相互フォローのつながり
- 勤務時間帯や出張先から推測できる投稿の時刻
つまり匿名アカウントであっても特定される前提でルールを組む必要があります。個人の自由だから会社は関係ないという整理では、問題が起きたときに守れません。
悪気のない投稿から社内情報や顧客情報が漏れる
情報漏えいの多くは悪意ではなく、仕事の自慢や日常の雑談から起きています。本人は社内の話題を共有しただけでも、外から見れば未公開の経営情報として扱われます。
とくに次のような投稿は、本人に自覚がないまま漏えいにつながりやすいものです。
- 発売前の商品や未発表のキャンペーンが写った写真
- 来店した顧客や取引先の名前を含む報告
- 会議資料やパソコン画面が背景に入った写真
- 新店舗の準備や人事異動をほのめかす書き込み
一度拡散した投稿は削除しても保存されて残り続けます。顧客情報が含まれていれば謝罪や説明の対応に追われ、取引先からの信用まで傷つきます。
炎上の影響は採用と取引先の判断にまで届く
炎上の損失はその場の対応費用では終わらず、採用と取引の場面まで響きます。社名で検索したときに出てくる情報は、応募者にも取引先にも同じように見えています。
- 応募者が社名を検索して炎上の記事やまとめにたどり着く
- 取引先の社内審査で管理体制を疑われて商談が止まる
- 社員の士気が下がり離職や採用辞退が続く
この影響を減らすには、会社側から日ごろの姿を伝える発信を持っておくことが効きます。公式アカウントで働く人や現場の様子を出していれば、検索したときの印象は変わります。発信を続ける体制の作り方は企業SNS運用体制の作り方|成果を出す組織づくりと生産性向上のコツでまとめています。
退職した人の過去の投稿も会社の評判として残る
退職した人の投稿であっても、在籍中の発言として会社の評判に残り続けます。アカウントの管理権は本人にあるため、会社から削除を求めることは簡単ではありません。
退職後に表面化しやすいのは、次のような内容です。
- 在籍中の不満や社内の実態を書いた投稿
- 転職活動の報告に添えられた前職の内情
- 退職者どうしのやり取りで広がる評判
だからこそ在籍中の教育と、退職時に秘密保持の範囲を確かめる運用がそろって必要になります。個人の意識に任せるのではなく、会社の守り方として線引きを決めておく話だと押さえてください。
従業員のSNS私的利用で起きるトラブルの4つの型
従業員のSNS私的利用で起きるトラブルは、大きく4つの型に分かれます。どれも悪意のない投稿から始まるので、禁止の呼びかけだけでは止まりません。まず自社で起きうる形を具体的に見てから、どこに線を引くかを決めてください。
トラブルの型 | 会社に出る影響 | 止めたい投稿の例 |
|---|
写り込み | 情報漏えい・顧客からの信用低下 | 社内で撮った写真や動画 |
不満の投稿 | 職場環境の悪化・取引先との関係悪化 | 人や会社を名指しした愚痴 |
勤務先の特定 | 個人への攻撃が会社へ飛び火 | 社名が分かる状態での日常投稿 |
副業との混同 | 会社の見解と誤解される | 立場をにおわせた宣伝や意見 |
社内の写真や書類が背景に写り込む
いちばん多いのは、本人が気づかないまま社内の情報が背景に入ってしまう事故です。休憩室の自撮りや飲み会の写真へ机の書類やホワイトボードが一緒に収まります。投稿した本人は職場の雰囲気を伝えたいだけで、悪気はありません。
- ホワイトボードに残った取引先名や案件の進み具合
- 机に広げた見積書や名簿が読める角度の写真
- 社員証の番号や顔写真がそのまま写った自撮り
- 発売前の商品や工事中の店舗内装が映る動画
- 入館ゲートや鍵の位置が分かるオフィスの撮影
一度拡散すると削除しても画面の保存が残るため、起きてからの回収はできません。撮影そのものを止めるより、社内で撮った写真は投稿前に背景を確かめる習慣を作るほうが現実的です。
同僚や取引先への不満をそのまま書いてしまう
次に多いのが、仕事の愚痴を個人アカウントへ書き込む型です。社名を出していなくても、業種と地域と役職がそろえば勤務先はすぐに絞り込まれます。取引先の担当者が見つけた場合は、会社同士の関係にまで響きます。
やっかいなのは、書いた本人が内輪の独り言のつもりでいる点です。フォロワーが少ないアカウントでも、引用や画面の保存で一気に外へ出ます。評価や待遇への不満は社内で受け止める窓口を用意して、SNSへ流れる前に拾ってください。
勤務先が分かる状態で私生活の投稿を続ける
プロフィールに社名や店名を書いたまま、私生活の投稿を続けるケースも増えています。本人の発言が会社の考えとして読まれやすく、炎上したときに窓口へ問い合わせが来ます。投稿の中身が法律に触れていなくても、不買や採用への影響は起こります。
- プロフィール欄に社名や店舗名を書いている
- 制服やロゴ入りの備品が写った投稿が多い
- 政治や宗教など意見が割れる話題を強く発信している
- 飲酒や運転など誤解を招く場面の投稿がある
会社として止められるのは、社名を出した状態での発信と会社の信用を傷つける内容です。私生活そのものを制限はできないので、名乗るかどうかの選び方を先に決めておきます。
副業アカウントと会社の立場が混ざって見える
副業や個人の発信を持つ社員が増え、会社の立場と個人の商売が混ざる相談も目立ちます。本業の肩書きを信用の裏付けに使って集客すると、会社が推薦していると受け取られます。トラブルが起きたとき、苦情は会社へ届きます。
- 本業の肩書きを入れて商品やサービスを売っている
- 取引先に個人アカウントから直接営業している
- 本業で得た事例やノウハウを許可なく出している
- 会社の公式アカウントと同じ写真を使い回している
副業を認めるなら、会社の名前と資産をどこまで使ってよいかを文書で決めてください。線引きがないまま黙認すると、問題が起きた後での注意は後出しの処分に見えてしまいます。
従業員のSNS私的利用はどこまで制限できる?線引きの考え方
全面禁止ではなく会社が関わる部分だけに絞る
従業員のSNS私的利用を全面禁止にすることはできません。プライベートの発信は個人の自由であり会社が丸ごと取り上げる権利は無いからです。現実的な線引きは、会社の信用や情報に関わる部分だけへ絞る形になります。
会社が止められるのは、業務で知った情報や社名が外へ出てしまう場面にほぼ限られます。次の5つは私的なアカウントであっても制限の対象にして問題ありません。
- 顧客や取引先の名前が分かってしまう投稿
- 未公開の商品や社内資料が写り込んだ写真
- 制服や社章で勤務先が特定できる状態での迷惑行為
- 会社の公式見解のように読めてしまう意見の発信
- 同僚の顔や連絡先を本人の許可なく載せること
逆に趣味や家族の話といった日常の投稿まで口を出すと、ルール全体が守られなくなります。禁止の範囲を広げるほど現場は読まなくなるため、守ってほしい所だけを短く書くほうが結果的に効きます。
就業時間中の利用と時間外の投稿を分けて考える
就業時間中と時間外では、会社が言えることの強さがはっきり変わります。勤務中は業務に集中してもらう前提があるので私的な閲覧や投稿を禁止できますが、時間外は投稿の中身で判断するしかありません。
場面 | 会社が言えること | 考え方 |
|---|
就業時間中の私的な閲覧や投稿 | 原則として禁止にできる | 勤務中は業務に専念してもらうため |
時間外の個人名義の日常投稿 | 内容には立ち入らない | 私生活まで会社が決める話ではない |
時間外でも勤務先が分かる投稿 | 内容によって注意できる | 会社の信用に直接響くため |
この3つを就業規則とルール文書の両方に同じ言葉で書いておくと、現場が迷いません。時間外の投稿を注意するときも、勤務先が分かる状態かどうかという基準があれば説明がぶれなくなります。
私物の端末と会社の端末で扱いを変える
端末の持ち主によってもルールの強さは変わります。会社が貸している端末は会社の所有物なので使い方まで細かく決められる一方、私物のスマホに同じ縛りをかけるのは無理があります。
- 会社の端末:私的なSNSのログインやアプリ追加を禁止にできる
- 会社の端末:社内の写真撮影と保存先のルールまで決められる
- 私物の端末:業務情報を保存しない点に絞って約束してもらう
- 私物の端末:社内での撮影可否だけを場所ごとに決めておく
- 共通:業務用アカウントへのログインは会社の端末だけに限る
私物の端末を使って業務連絡を取っている会社は、ここが曖昧なまま運用されています。顧客とのやり取りがどの端末のどのアプリに残っているかを一度洗い出すと、決めるべきルールの範囲が見えてきます。
制限を強めすぎると採用と定着に跳ね返る
ルールを厳しくしすぎると、別のところで損をします。SNSでの発信を全部禁じている会社は、社員が自社の話題に触れなくなり採用の場面でも会社の様子が外から見えなくなるからです。
実際に採用へつなげている会社は、私的利用を締め上げるのではなく公式アカウントで会社の中身を出す方向へ動いています。医療社団法人 星晶会様は看護師採用に悩んでいた状態から、採用専用のInstagramをゼロから立ち上げて職場の雰囲気を発信し応募につなげました。伸ばし方の細かい工夫は【企業Instagram】いいね周りのアルゴリズム効果は?プロが解説でも解説しています。
禁止する範囲と、会社として発信を後押しする範囲はセットで決めるのが現実的です。守る線を明確にしたうえで公式の発信を増やすほうが、採用でも定着でも効果が出やすくなります。
従業員のSNS私的利用ルールの作り方5ステップ
いまの使われ方と過去にヒヤリとした事例を洗い出す
ルール作りの最初にやることは文章を書くことではなく現状の把握です。社員がどのSNSをどんな目的で使っているかを知らないまま条文を作ると、実態とずれた禁止事項が並んで誰も守らない文書になります。
情報を集める相手は広報だけでなく現場の管理職と若手の両方に広げたいところです。過去に社内で話題になったヒヤリとした出来事は記録に残っていないことが多いので、人事と総務へのヒアリングで口頭の記憶を拾い上げます。
- 社員が個人で使っている主なSNSと、だいたいの利用目的
- 業務中の投稿や業務端末からの閲覧がどの程度あるか
- 社名や制服が写った投稿が過去に出たことがあるか
- 顧客や取引先と個人アカウントでつながっている部署
- 過去のクレームや炎上の一歩手前で止まった出来事
守りたいものを情報と人とブランドの順で決める
洗い出しが終わったら、何を守るためのルールなのかを先に決めます。守る対象があいまいなまま禁止事項を増やすと、社員からは管理のためだけの決まりに見えて反発が生まれます。
優先順位は情報・人・ブランドの順で考えると整理しやすくなります。情報は漏れた瞬間に取り返しがつかず、人は誹謗中傷やプライバシーの侵害で心身の被害が出て、ブランドは時間をかければ回復の余地があるためです。
この順番を社内で共有しておくと、新しい事態が起きたときの判断軸になります。判断に迷う投稿が出てきても、どの対象が脅かされているかを見れば対応の重さを決められます。
禁止することとグレーの判断基準を書き分ける
ルール文書は禁止事項とグレーゾーンの判断基準を分けて書くのが要点です。すべてを禁止で書こうとすると条文が膨らみ、現場は読まずに放置してしまいます。
禁止するのは線を越えた時点で会社が守れなくなるものだけに絞ります。それ以外は判断基準を示して社員が自分で考えられる形にすると、想定外の場面でも対応できる人が育ちます。
- 禁止:未公開の経営情報や顧客情報の投稿
- 禁止:顧客や取引先が特定できる写真や会話の投稿
- 禁止:同僚や取引先への誹謗中傷と差別的な発信
- 基準:社名を出すなら個人の見解だと明記する
- 基準:迷ったら投稿前に上長か窓口へ相談する
違反が起きたときの対応と相談窓口を決める
ルールと同時に決めておきたいのが、問題が起きた後の動き方です。誰が一次連絡を受けて誰が削除や謝罪を判断するかが決まっていないと、初動が遅れて被害が広がります。
あわせて相談窓口を作り、投稿してしまった社員が自分から申し出られる状態にします。隠す方が不利になる仕組みにしておくと、発覚が早まって会社が打てる対応の幅も残ります。
就業規則とガイドラインのどちらに載せるか決める
最後に、決めた中身をどの文書へ載せるかを選びます。懲戒の対象にする内容は就業規則に根拠が必要で、判断基準や推奨事項はガイドラインに置いた方が改定しやすくなります。
載せる文書 | 向いている内容 | 改定のしやすさ |
|---|
就業規則 | 機密の持ち出しや誹謗中傷など懲戒につながる禁止事項 | 手続きが必要で時間がかかる |
ガイドライン | グレーの判断基準・相談の流れ・推奨する書き方 | 随時の見直しがしやすい |
両方を一度に整えるのが難しければ、先にガイドラインを配って運用しながら条文へ反映する進め方でも構いません。大事なのは文書が完成することではなく、社員が迷ったときに開く場所が決まっていることです。
ルールを形だけにしないための運用と教育の進め方
全員向けの説明と部署ごとの補足を分ける
ルールを守ってもらうには全員へ同じ土台を伝えたうえで、部署ごとの補足を足す二段構えにします。全員向けの説明は情報を外へ出さない線引きと困ったときの相談先の2点に絞ると頭に残ります。
そのうえで部署ごとに起こりやすい場面を足します。何がまずいのかは仕事の内容によって変わるためです。
- 全員向け:会社の情報を外へ出さない線引きと相談先
- 営業向け:客先の社名や訪問先が写り込む投稿の注意
- 製造や開発向け:社内の画面や設備が入る写真の扱い
- 店舗向け:来店したお客様の顔や伝票の写り込み
- 管理部門向け:採用や人事の未公開情報を話さない
補足は現場の人が思い浮かぶ場面の言葉で書くと、自分のこととして読んでもらえます。
入社時と異動時に必ず伝える仕組みにする
伝える機会を人の記憶に任せると必ず抜けるので、入社と異動の手続きの中へ最初から組み込みます。入社時は雇用契約の説明とあわせて渡し、読んだことの確認まで取ると後の指導がしやすくなります。
異動のときも同じ説明が必要です。扱う情報と関わる取引先が変わると、投稿していい範囲も変わるためです。
- 入社手続きの書類一式へ説明と確認欄を入れる
- 異動の引き継ぎ項目へSNSの注意点を1行足す
- 役職が上がった人には相談を受ける側として伝える
- アルバイトや派遣の受け入れ時も同じ説明をする
公式アカウントの担当者には追加のルールを置く
公式アカウントの担当者は会社の名前で発信するため、私的利用のルールとは別の決まりを用意します。投稿前に誰が中身を確認するのかと、まずいことが起きたときに誰が投稿を止めるのかを先に決めておきます。
担当者が個人のアカウントも持っている場合は、両方の立場が混ざらないように線を引いておきます。起きたあとの初動の流れは企業SNS炎上の原因と事例まとめ|起きたときの初動対応と防止策【2026年最新版】でまとめています。
実際の投稿を題材に判断の練習をする
文書を読むだけでは判断する力は付かないので、実際の投稿を題材にして良し悪しを話す時間を作ります。迷う一歩手前の例を出すほど、現場で使える基準になります。
- 社外に出していい写真かを数枚の写真で判断する
- 仕事の不満を書いた投稿を安全な文へ書き直す
- 他社で問題になった投稿の原因を話し合う
- 相談すべきかどうかの線を自分の言葉で言う
答え合わせでは正解を示すだけでなく、どこで迷ったかを共有すると部署をまたいで基準が揃います。
見直す頻度と担当を先に決めておく
SNSの使われ方は数年で変わるため、見直す時期と担当を決めないままだと古い文書だけが残ります。年に1回の定期の見直しと、新しいサービスが広まったときの臨時の見直しをあらかじめ決めておきます。
担当は人事か広報のどちらかに置き、現場から来た相談の内容を記録して次の見直しの材料にします。採用アカウントをゼロから立ち上げた医療社団法人 星晶会様のように、担当と進め方を決めた会社は運用が続きます。
ルールを整えた会社が公式SNSで成果を出した事例
医療法人が採用アカウントを立ち上げて応募につなげた例
ルールを整える目的は投稿を止めることではなく、社員に出てもらって成果を取る土台をつくることです。看護師の採用に悩んでいた医療社団法人 星晶会様は、採用専用のInstagramをゼロから立ち上げて約3ヶ月で応募につなげました。
- インスタ経由の求人応募は研修前の0件から2件へ
- インプレッションは0件から約2.6万件まで積み上がった
- プロフィールアクセスは約3ヶ月で1,088件
- 月間のリール投稿はほぼ0本から8〜9本へ増えた
伸びた理由は現場の職員が実際に働く様子を見せる投稿が増えたからで、求職者は応募前に職場の雰囲気をつかめるようになりました。
ホテルが従業員の出演を前提にリールを回した例
芦原国際ホテル美松様はSNS運用のノウハウも担当者もいない状態から始めて、約3ヶ月でSNS経由の宿泊予約47件を獲得しました。写真中心の発信をやめて従業員が登場するリール動画へ切り替えたことが転換点になりました。
- 月間インプレッションは3.5万人から9.3万人へ
- フォロワー以外に届いた割合は48%から90%へ
- プロフィールアクセスは1,866件から4,773件へ
- 月間のリール投稿はほぼ0件から6〜8件へ
従業員が顔や声を出す運用は、会社として何をどこまで出すかが決まっていないと現場が怖がって止まります。出演の範囲や撮影した素材の扱いを先に決めておくと、現場は迷わず撮影に協力してくれます。
不動産会社がFacebookから高額案件を受注した例
株式会社クリエートハウジング様は代表自身がFacebookでテキスト発信を続け、SNS経由で200万円の案件を受注しました。会社の理念や過去の実績を自分の言葉で書いた投稿にいいね88件とコメント5件が付き、読んだ人の共感が商談へつながっています。
高額な不動産売買では担当者の人柄が最後の決め手になるため、個人の名前で発信できる状態を会社として認めておく価値は大きいです。私的利用の線引きが曖昧なままだと、この種の発信は本人の自己判断に任せるしかなくなります。
守りのルールが攻めの運用を進めやすくする理由</h3>
3社に共通していたのは、社員や代表が自分の言葉で発信する前提が社内で共有されていた点です。守りのルールは発信のブレーキではなく、どこまで踏み込んでよいかを示すガイドとして働きます。
- 書いてよい範囲が決まるので投稿の前に迷わない
- 判断に困る内容を相談する相手と手順が分かっている
- 炎上の火種を知っているため強い表現も安全に選べる
- 会社の見解と個人の意見の線引きを本人が説明できる
- トラブルが起きたときの初動が決まっていて早く収まる
逆にルールが無いまま公式アカウントを始めると、担当者は何かあったら自分の責任になると感じて無難な投稿しか出せません。守りを先に固めた会社ほど社員を前に出す運用へ踏み込めて、採用や受注という成果にたどり着いています。
従業員のSNS私的利用ルールで失敗しやすい注意点
禁止の一覧を並べただけで判断基準が無い
いちばん多い失敗は、やってはいけないことを並べただけでルールを作り終えた気になる形です。現場が実際に困るのは一覧に載っていないグレーな投稿で、判断の物差しが無いと結局その場の勘で決めてしまいます。
禁止の一覧の前に、迷ったときに自分で判断できる問いを置いておくと使われるルールになります。
- 写真や動画に社名・制服・社内の設備が写っていないか
- 仕事を通して知った情報が元になっていないか
- 取引先や患者・顧客が特定できる要素が残っていないか
- 会社の見解ではなく個人の意見だと読み手に伝わる書き方か
- 勤務時間中や社用端末からの投稿になっていないか
この問いに実際の投稿例を2〜3件添えると理解が一気に進みます。文字だけの規程より、良い例と悪い例を並べたほうが現場に残ります。
監視に寄りすぎて社員の信頼を失う
私的アカウントの申告を義務にしたり、全員の投稿を定期的に見回ったりする運用は、守る目的を越えて社員の生活へ踏み込みます。見張られていると感じた時点で協力は得られず、трбоubleの芽を隠す方向へ動いてしまいます。
会社が見るのは誰でも読める公開情報の範囲までにして、何のために見るのかを先に社内へ伝えます。社名や商品名で検索して危ない投稿に気づいたら、処分ではなく先に本人へ事情を聞く流れにしておくと話が早いです。
担当者任せで決裁のラインが決まっていない
ルールはあるのに、問題が起きたときに誰が判断するかを決めていない会社は多いです。担当者が上司を探している間に投稿が広がり、対応が半日から一日遅れます。
次の4つを名前付きで決めておくと、担当者が自分の判断で抱え込まずに済みます。
- 最初に連絡を受ける窓口(部署名と担当者名)
- 投稿を消すかどうかを決める人
- 社外へ説明する文章を承認する人
- 夜間と休日に連絡が取れる経路
決めた内容は規程の末尾ではなく、1枚の連絡フローにして全社員が見られる場所へ置きます。
書いた人を責めるだけで再発防止につながらない
投稿した本人を処分して終わりにすると、同じ失敗がまた別の人から出ます。本人の不注意ではなく、判断材料が渡っていなかった仕組みの側に原因があることがほとんどです。
起きた事例は個人名を外して社内へ共有し、どの問いを飛ばしたせいで起きたのかを一緒に確かめます。医療社団法人 星晶会様は撮影や投稿の基準を整えたうえで採用アカウントの運用を始め、職員が迷わず投稿できる形を作りました。守るためのルールが、発信を増やす土台にもなります。
まとめ:従業員のSNS私的利用は線引きと教育で守れる
経営として先に決めておくべきこと
従業員のSNS私的利用は禁止で押さえ込むものではなく、線引きと教育で守るものです。就業時間外の投稿そのものを広く禁じると行き過ぎになるため、会社の損害につながる行為に絞って止める形が現実的です。
経営の立場で先に決めておくことは多くありません。次の4点さえ固めておけば、現場の判断は大きくぶれなくなります。
- 守る対象を決める(顧客情報・社内の非公開情報・取引先の名前)
- 禁止と推奨の境目を文章にする(写真の背景・制服姿・勤務中の投稿)
- 炎上や漏えいが起きたときの連絡先と初動の担当を決める
- 新しく入った人への説明と、年1回の見直しを予定に入れる
ルールを作った日で終わらせないことが一番の分かれ目になります。読む機会と話し合う機会を作ると、従業員は自分ごととして受け止めます。
自社だけで進めにくいときの相談先
規程の文言は社会保険労務士や弁護士へ相談すると安全です。一方で投稿の中身や炎上しやすい表現の判断は法律の専門家の領分から外れるため、SNS運用の経験がある相手と組むほうが早く進みます。
相談先を選ぶときは、次の3つを満たすかどうかで見ると迷いません。
- 自社と同じ業種での運用実績があるか
- 規程づくりだけでなく社内研修まで対応できるか
- 担当者が代わっても回る形を残してくれるか
SNSCHOOLでは医療法人やホテル、不動産会社の支援を通じて、社員が自分で発信を続けられる体制づくりを手伝ってきました。私的利用のルールを整える流れで、公式アカウントの運用まで一緒に立て直す会社も増えています。
よくある質問
Q1. 就業規則に書いていない私的利用でも会社は注意できますか?
A. 書いていない場合は注意の根拠が弱く、本人と見解が食い違いやすくなります。会社の信用に関わる投稿を対象にする旨を先に明文化しておくと、注意も指導も進めやすくなります。
Q2. 匿名のアカウントの投稿まで会社がルールを決められますか?
A. 匿名でも社内の写真や取引先の名前が出れば勤務先は特定されます。アカウント名ではなく投稿の中身を基準にしたルールにすると、匿名かどうかに関係なく線引きができます。
Q3. 私的利用のルール違反はすぐ懲戒の対象にできますか?
A. いきなり重い処分にするのは難しく、注意から始まる段階を先に決めておく必要があります。何をしたらどの対応になるのかを書いておけば、現場の判断も社員の納得も得やすくなります。
Q4. 公式アカウントの担当者と一般の社員でルールは分けるべきですか?
A. 分けたほうが現実的です。担当者は会社の名前で発信するため確認の手順や返信の基準まで要りますが、一般の社員には守ることを絞って伝えたほうが読まれて守られます。
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