SNS運用を担当していると、
「SNSの投稿は続けているけれど、本当に成果が出ているのかわからない」
「上司に聞かれても、数字でうまく説明できない」
こうしたモヤモヤを感じる場面は少なくないですよね。
企業のSNS活用が当たり前になった今、ただ投稿を続けるだけでなく、データに基づいて運用を改善し事業成果につなげる力が求められるようになっています。
とはいえ、「何を測ればいいのか」「数値は見ているけれど改善に活かせていない」という壁にぶつかっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、事業目標から逆算するKGI・KPIの設計手順から、Instagram・X・TikTokの媒体別に押さえるべき指標、データ分析とPDCAの具体的な回し方、さらには経営層に伝わるレポーティングのコツまで、効果測定の全体像を一つのフレームワークとして整理しました。読み終えたあと、「明日からまずこれをやろう」が見つかる内容になっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
SNS運用で効果測定が不可欠な理由と現状の課題
SNSアカウントを開設し、定期的に投稿を続けている企業は増えています。
しかし、「投稿はしているけれど、成果が出ているのかよくわからない」そんなモヤモヤを抱えている方、とても多いのです。
効果測定の仕組みがないまま運用を続けると、担当者の努力が正しく評価されないだけでなく、改善のチャンスも見逃してしまう可能性があります。他にどんなリスクがあるのか見ていきましょう。
効果測定なしの運用が招く3つのリスク
「とりあえず投稿を続けていればフォロワーが増えるはず」という感覚的な運用は、気づかないうちに3つのリスクを抱えることになります。
1. リソースの浪費に気づけない
投稿の企画、撮影、キャプション作成、コメント対応などSNS運用には想像以上の時間と工数がかかっています。
効果測定をしていないと、「どの作業が成果につながるか」「どの作業が空振りしているのか」が見えません。たとえば、毎回2時間かけて作っている画像投稿よりも、15分で撮ったスタッフの日常動画のほうがはるかにリーチが伸びている、というケースは珍しくないんです。データを見ていなければ、この事実に気づくことすらできません。
2. 改善の機会を逃し続ける
SNS運用で成果を出しているアカウントの多くは、データドリブン(データに基づく意思決定)のアプローチを取り入れています。
投稿ごとの反応を数値で把握し、「何が効いたのか」「なぜ伸びなかったのか」を分析することで、次の投稿をより良くしていく。この改善サイクルがなければ、同じパターンの投稿をただ繰り返すことになり、アカウントの成長は頭打ちになりやすい傾向があります。
3. 社内でSNS運用の価値を説明できない
私がクライアントによく聞かれるのが、「上司からSNSって意味あるの?と言われたとき、うまく返答できないんです」という悩みです。効果測定の数値がなければ、SNS運用の成果を客観的に示す材料がありません。結果として、予算やリソースの確保が難しくなり、担当者が片手間で運用せざるを得ない状況に追い込まれることもあります。
これは担当者個人の問題ではなく、効果測定の仕組みが整っていないことが根本的な原因です。
多くの企業がつまずく効果測定の壁
「効果測定が大事なのはわかった。でも、具体的に何をどう測ればいいのかがわからない」
この声は本当に多く寄せられます。私の経験上、企業がつまずくポイントは大きく2つあります。
1つ目は、測るべき指標が定まっていないこと。
フォロワー数、いいね数、インプレッション数、エンゲージメント率などSNSには確認できる数値がたくさんありますが、自社にとって本当に重要な指標はどれなのかを整理できていない企業がほとんどです。
「とりあえずフォロワー数を見ています」という状態では、効果測定とは言えません。
2つ目は、数値を見ても改善アクションにつなげられないこと。
各プラットフォームのインサイト画面を毎週確認している担当者は少なくありません。しかし、「エンゲージメント率が先月より下がった」とわかっても、「だから次に何をすべきか」が見えなければ、数値を眺めているだけで終わってしまいます。
こうした課題を乗り越えるためには、事業目標から逆算した効果測定の設計図が必要です。
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効果測定の土台づくり — KGIとKPIの正しい設計手順
「何を測ればいいかわからない」という課題。その根本原因は、効果測定の土台となるKGI・KPIの設計ができていないことにあります。ここでは、事業目標からKGI・KPIを逆算して設計する具体的な手順を整理していきます。

KGIとKPIの違いと関係性を整理する
まず、KGIとKPIという言葉の意味を確認しておきます。
KGI(Key Goal Indicator)は「最終的に達成したいゴールを測る指標」
KPI(Key Performance Indicator)は「ゴールに向かうプロセスが順調かどうかを測る中間指標」です。
簡単に言えば、KGIが「目的地」、KPIが「目的地までの道のりに置かれたチェックポイント」のような関係です。
たとえば、SNS経由の月間問い合わせ件数を20件にするというKGIを設定した場合、そこに至るまでの「プロフィールへのアクセス数」「リンクのクリック数」「投稿のリーチ数」などがKPIになります。
KGIが1つあり、その下にKPIが複数ぶら下がるツリー構造をイメージすると整理しやすいです。
ここで気をつけたいのが、「フォロワー数1万人」のようなSNS上の数字だけをKGIにしてしまうケースです。
フォロワー数はあくまでKPIの1つであり、事業にとっての成果(売上、問い合わせ、採用応募など)がKGIになるべきです。
この区別が曖昧なまま運用を始めると、「フォロワーは増えたけど売上には全然つながらない」という事態に陥りやすくなります。
事業目標からKGI→KPIへ落とし込む5ステップ
KGI・KPIの設計は、以下の5つのステップで進めると整理しやすくなります。
1. 事業目標を明確にする
まずは「SNS運用で何を実現したいのか」を事業レベルで定義します。
よくあるパターンとしては、「ECサイトの売上向上」「BtoB企業のリード獲得」「採用候補者の母集団形成」「ブランド認知の拡大」などがあります。ここが曖昧だと、この後のステップがすべてぶれてしまうので、関係者間でしっかり合意を取っておくことが大切です。
2. KGIを数値で設定する
事業目標を具体的な数値に変換します。「売上を伸ばしたい」ではなく「SNS経由の月間売上を50万円にする」、「認知を広げたい」ではなく「月間リーチ数を10万に到達させる」というように、測定可能な形に落とし込みます。
数字が苦手で…という方は、まずは現状の数値を把握するところから始めてみてください。現状がわかれば、目標の数値も設定しやすくなります。
3. KGIに影響する要因を分解する
設定したKGIを達成するために、どんな要素が影響しているかをツリー状に分解します。たとえばKGIが「SNS経由の問い合わせ月20件」なら、「プロフィールアクセス数 × リンクタップ率 × 問い合わせフォーム送信率」のように因数分解できます。この分解ができると、どの数値を伸ばせばKGIに最もインパクトがあるかが見えてきます。
4. KPIとして追跡する指標を選定する
分解した要因の中から、日常的に追跡・改善できるものをKPIとして選びます。
注意したいのは、KPIを欲張りすぎないことです。私の経験上、主要KPIは3〜5個程度に絞るのがおすすめです。
あれもこれも追いかけると、結局どれも中途半端になってしまいます。
5. 測定方法と確認頻度を決める
最後に、各KPIを「どのツールで」「どの頻度で」確認するかを決めます。
各プラットフォームの公式インサイト機能で確認できるのか、Google Analyticsなど外部ツールとの連携が必要なのかを整理しておくと、運用がスムーズに回り始めます。
運用フェーズ別のKPI設計例(立ち上げ期・成長期・成熟期)
KPIは一度設計して終わりではなく、アカウントの成長フェーズに応じて重点指標を見直していく必要があります。SNSCHOOLの支援でも、フェーズに合わせたKPIの再設計を重要視しています。
【立ち上げ期】まずは「届ける」ことに集中する
アカウント開設から数か月の立ち上げ期は、まだフォロワーも少なく、投稿がどこまで届いているかの把握が最優先です。この段階ではリーチ数やインプレッション数をKPIの中心に据え、「どんな投稿が多くの人の目に触れたか」を分析します。エンゲージメント率やコンバージョン数を気にするのはまだ早い段階です。
【成長期】「届いた人に響いているか」を測る
フォロワーが増え、一定のリーチが安定してきたら、KPIの重心をエンゲージメント指標(いいね率、保存数、コメント数、シェア数など)へ移します。リーチだけ多くても反応が薄ければ、コンテンツの質や方向性を見直すタイミングです。
【成熟期】事業成果との接続を強化する
エンゲージメントも安定してきた成熟期には、KPIを事業成果に直結する指標(リンクのクリック数、問い合わせ数、ECサイトへの流入数など)へシフトします。
この段階では、SNS単体の指標だけでなく、Google Analyticsなどと連携してSNS経由のコンバージョンを追跡する体制を整えることが重要になります。
実際に、ある支援先企業では立ち上げ期にリーチ数を最重要KPIとして認知拡大に注力し、成長期にはエンゲージメント率を重視した投稿内容の最適化へ切り替えたことで、成熟期には安定したリード獲得につなげることができました。このように、フェーズごとにKPIを意図的にシフトさせることが、効果測定を事業成果に結びつけるポイントです。
KGIとKPIの設計ができたら、次はそれを実際にどう測定していくのか。プラットフォームごとの具体的な指標と見方を見ていきましょう。
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プラットフォーム別に押さえるべき効果測定の指標と見方
KGIとKPIの設計ができたら、次は実際に各プラットフォームで「何を」「どこで」確認するかを具体的に押さえていきます。
Instagram、X(Twitter)、TikTokの主要3媒体について、それぞれの公式分析機能で確認できる指標と、特に注目すべきポイントを整理します。媒体ごとに指標の定義や見え方が異なるため、複数のSNSを運用している方は違いにも注意してみてください。

Instagram — インサイトで確認すべき重要指標
Instagramにはビジネスアカウント向けの「インサイト」機能が用意されており、投稿ごと・アカウント全体のパフォーマンスを確認できます。確認できる指標は多いですが、先述のKPI設計に合わせて「認知」「エンゲージメント」「コンバージョン」の3つのレイヤーで整理すると、見るべきポイントが明確になります。
認知レイヤーでは、リーチ数とインプレッション数が基本指標です。リーチ数は「投稿を見たユニークユーザー数」、インプレッション数は「投稿が表示された延べ回数」を指します。同じ人が2回見た場合、リーチは1ですがインプレッションは2とカウントされます。立ち上げ期のKPIとしてはリーチ数を重視し、投稿がどれだけ新しいユーザーに届いているかを見ていくのがおすすめです。
エンゲージメントレイヤーでは、いいね数・コメント数に加えて、保存数とシェア数に注目してください。特に保存数は、Instagramのアルゴリズムがコンテンツの質を判断する上で重要視しているとされる指標です。「いいね」は気軽にできますが、「保存」はあとで見返したいと思うほど価値があった証拠。保存数の多い投稿には、読者にとって実用的な情報が含まれている傾向があります。
コンバージョンレイヤーでは、プロフィールへのアクセス数、ウェブサイトのリンクタップ数、そしてストーリーズのリンクスタンプのタップ数を確認します。SNS経由の問い合わせや購入につなげたい場合、この導線上の数値が改善対象になります。
X(Twitter)— アナリティクスの読み解き方
X(旧Twitter)にはポスト(ツイート)ごとの表示回数やエンゲージメント数を確認できるアナリティクス機能があります。
Instagramとは指標の定義が異なる部分があるので、混同しないよう注意が必要です。
まず押さえておきたいのが、Xの「インプレッション」はInstagramの「リーチ」とは意味が異なるという点です。
Xのインプレッションは、そのポストがユーザーのタイムラインに表示された回数(延べ回数)を示します。
1人のユーザーが同じポストを複数回見ればその分カウントされるため、リーチ(ユニークユーザー数)とは性質が違います。
異なるプラットフォーム間で数値を単純比較しないよう注意してください。
認知レイヤーでは、インプレッション数を基本指標として追跡します。
Xはリポスト(リツイート)による拡散力が強みのプラットフォームなので、オーガニックインプレッション(通常表示)とリポスト経由のインプレッションを分けて把握できると、どの投稿が拡散されやすかったかの分析に役立ちます。
エンゲージメントレイヤーでは、いいね数・リポスト数・返信数・引用ポスト数を確認します。
Xではエンゲージメント率(エンゲージメント数÷インプレッション数)を算出して追跡するのが一般的です。特にリポスト数は「第三者が自分のフォロワーに広めたいと思った」ことを意味するため、コンテンツの共感性・有用性を測る指標として重要です。
コンバージョンレイヤーでは、リンクのクリック数とプロフィールへのアクセス数がポイントになります。
Xは外部リンクへの誘導がしやすい媒体なので、ECサイトやLPへの流入を目的にしている場合は、リンクのクリック率を重点的に追いかけると改善の糸口が見つかりやすくなります。
TikTok — 再生回数だけでは不十分な理由と注目指標
TikTokのビジネスアカウントでは「インサイト」から投稿ごとの詳細データを確認できます。TikTokといえば再生回数が目立ちますが、再生回数だけを追いかける運用では改善ポイントが見えにくくなる可能性があります。
再生回数はあくまで「どれだけ表示されたか」を示す認知レイヤーの指標です。
TikTokのアルゴリズムは、ユーザーの視聴行動を細かく分析して動画をレコメンドする仕組みのため、再生回数が多い=質の高いコンテンツとは限りません。おすすめフィードに乗って一時的に再生回数が跳ねても、視聴完了率やエンゲージメントが低ければ、継続的な伸びにはつながりにくい傾向があります。
そこで注目したいのが、視聴完了率(動画を最後まで見た割合)と平均視聴時間です。
これらはTikTokのアルゴリズムがコンテンツの質を評価する際に重視しているとされる指標で、再生回数よりもコンテンツの「刺さり具合」を正確に反映します。視聴完了率が高い動画は、冒頭のフック(引き込み)がうまく機能し、最後まで飽きさせない構成になっている証拠です。
エンゲージメントレイヤーでは、いいね数・コメント数・シェア数・保存数を確認します。
TikTokではシェア数が特に重要な指標です。ユーザーが友人やグループに動画を共有する行動は、アルゴリズムにとって「強い推薦シグナル」として機能するとされています。
SNSCHOOLの支援でも、TikTok運用においては再生回数だけでなく視聴完了率とシェア数をセットで追跡することを推奨しています。再生回数が伸び悩んでいるときでも、視聴完了率が高ければコンテンツの方向性は正しく、配信の最適化(投稿時間やハッシュタグの調整)で改善できる可能性が高いからです。
運用者が意識すべき点
複数のプラットフォームを運用している場合、媒体間で同じ名称の指標でも定義が異なることがあります。たとえば「インプレッション」一つとっても、Instagramでは延べ表示回数、Xでもタイムラインへの表示回数と、似て非なるカウント方法です。レポートを作成する際は、各媒体の指標定義を正確に把握した上で、プラットフォームごとに分けて評価することを心がけてみましょう。
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効果測定の実践 — データ分析からPDCA改善につなげる方法
KPIを設計し、各プラットフォームの指標を把握できたら、いよいよ日々の運用で効果測定を回していくフェーズです。
ここでは、データを「見る」だけで終わらせず、「改善アクション」に確実につなげるための実務的な手順を整理していきます。

週次・月次で行うべき分析ルーティン
効果測定は一度やって終わりではなく、定期的なルーティンに組み込むことで初めて機能します。おすすめは「週次の簡易チェック」と「月次の振り返り分析」の2段構えです。
週次チェック(所要時間の目安:15〜30分) では、その週に公開した投稿のパフォーマンスをざっと確認します。確認するのは、先述のKPI設計で選定した3〜5個の主要指標に絞ってください。全指標を毎週追いかける必要はありません。ここでのポイントは「先週と比べてどう動いたか」を把握することです。大きな変動があった投稿をピックアップして、「なぜ伸びたのか」「なぜ落ちたのか」の仮説をメモしておきます。この段階では深掘りしなくて大丈夫です。
月次振り返り(所要時間の目安:1〜2時間) では、1か月分のデータを俯瞰して傾向を分析します。KPIの推移をグラフ化し、前月比・前年同月比で変動を確認します。週次チェックでメモした仮説を月次データで検証し、翌月の投稿計画に反映するのがこのタイミングです。月次の振り返りが、次のセクションで紹介するABテストのテーマ設定にもつながります。
私の経験上、週次チェックを担当者レベルで、月次振り返りをチーム全体で行う運用が最もスムーズに回ります。最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。まずは「毎週金曜の15時に定例ミーティング」のように時間を固定して習慣化することから始めてみてください。
ABテストで投稿パフォーマンスを改善する具体的手順
データを見て課題が見えてきたら、次は改善の打ち手を検証する段階です。ここで有効なのがABテストを行うことです。条件を1つだけ変えた2パターンの投稿を比較して、どちらがより効果的かを検証する手法です。
ABテストの進め方を4つのステップで整理します。
1. テストする変数を1つに絞る
投稿時間、画像のフォーマット(カルーセルvs単一画像)、キャプションの長さ、CTA(行動喚起)など、テストできる要素はたくさんありますが、一度に変えるのは必ず1つだけにしてください。複数の要素を同時に変えると、どの変更が結果に影響したのか判断できなくなります。
2. 仮説を立てる
「投稿時間を朝7時から夜8時に変えれば、ターゲット層のアクティブ時間帯と重なり、エンゲージメント率が上がるのではないか」のように、変数・予想される結果・その理由をセットで仮説を立てます。仮説なしのテストは「なんとなく試してみた」で終わりがちです。
3. 十分なサンプル数で比較する
1回ずつの投稿で「こっちが良かった」と判断するのは早計です。同じ変数のテストを最低でも3〜5回繰り返し、傾向として差があるかどうかを見てください。SNSのパフォーマンスはタイミングや外部要因にも左右されるため、単発の結果だけで判断すると誤った結論に至る可能性があります。
4. 結果を記録して次のテストにつなげる
テストの結果は、「変数」「仮説」「結果の数値」「考察」をセットで記録しておきます。このログが蓄積されると、自社アカウントの「勝ちパターン」が徐々に見えてきます。
SNSCHOOLが支援した京みずは様の事例では、投稿のビジュアルフォーマットや訴求テーマについてABテストを繰り返し実施し、データに基づいてコンテンツの方向性を最適化していきました。テスト結果をもとに改善サイクルを回し続けたことで、投稿のパフォーマンスを着実に向上させることができた事例です。ABテストは一度の成功・失敗で終わりではなく、「テスト→分析→次のテスト」というPDCAサイクルの中で継続的に回していくことが大切です。
数値が伸び悩んだときのチェックリスト
運用を続けていると、「KPIの数値が横ばいのまま動かない」「先月まで伸びていたのに急に落ちた」という場面に必ず直面します。気持ちはすごく分かりますが、焦って投稿の方向性をガラリと変えるのは逆効果になることもあります。まずは以下のチェックリストで原因を切り分けてみてください。
- 投稿の質は維持できているか?
忙しさから投稿のクオリティが落ちていないか、過去に反応の良かった投稿と最近の投稿を比較してみる - 投稿の頻度やタイミングに変化はないか?
投稿頻度の低下や投稿時間のずれが原因でリーチが落ちている可能性がある - アルゴリズムの変動はなかったか? —
各プラットフォームはアルゴリズムを定期的にアップデートしています。公式アナウンスやSNSマーケティング関連の情報源をチェックしてみる - 競合アカウントの動向はどうか?
自社だけでなく同業他社のアカウントも同時期に数値が落ちているなら、市場全体のトレンド変化の可能性がある - ターゲットのニーズが変わっていないか? —
季節要因やトレンドの変化によって、フォロワーが求めるコンテンツが変わっている場合がある
このチェックリストで原因の見当がついたら、先ほどのABテストの手順を使って改善施策を検証していきます。
原因が特定できない場合は、直近3か月分のデータを時系列で並べて、変化の起点を探ってみてください。どこかのタイミングで数値の傾向が変わったポイントが見つかるはずです。
効果測定で重要なのは、数値の上がり下がりに一喜一憂することではなく、データをもとに「次に何をするか」を決められる状態を作ることです。次のセクションでは、この分析結果をどう社内に共有し、事業成果につなげるかを見ていきましょう。
効果測定を事業成果につなげるレポーティングと社内共有のコツ
効果測定の仕組みが整い、データに基づく改善サイクルが回り始めたら、次に重要になるのが「その成果をどう社内に伝えるか」です。先述の通り、SNS運用の価値を社内で説明できないという悩みは多くの担当者が抱えています。ここでは、効果測定の結果を経営層や社内の関係者に正しく伝え、事業成果として認めてもらうための実務的なポイントを整理します。
経営層に伝わるSNSレポートの作り方
SNS運用の報告で陥りがちなのが、「フォロワーが○○人増えました」「エンゲージメント率が○%でした」と数値だけを羅列してしまうパターンです。SNS担当者にとっては意味のある数値でも、経営層にとっては「それで、売上にどう影響したの?」が知りたいポイントです。
経営層に伝わるレポートを作るためのポイントは3つあります。
1つ目は、事業KGIとの関連から報告を始めること。
レポートの冒頭で「今月のSNS経由の問い合わせ件数は15件(目標20件に対して進捗75%)」のように、事業目標に対する進捗を最初に示します。個々のSNS指標はその後の補足情報として位置づけると、経営層にとって全体像が掴みやすくなります。
2つ目は、「数値の変動」ではなく「打ち手と結果」をセットで伝えること。
「リーチ数が前月比20%増加しました」だけでは、何が起きたのかが伝わりません。「投稿時間を夜8時に変更したところ、ターゲット層のアクティブ時間帯と重なり、リーチ数が前月比20%増加しました。来月はこの時間帯でキャプションのABテストを実施予定です」のように、施策→結果→次のアクションの流れで報告すると、SNS運用がPDCAを回している取り組みであることが伝わります。
3つ目は、ビジュアルで直感的に伝えること。
数値の羅列よりも、KPIの推移グラフや前月比の矢印表記などを使って、一目で状況がわかるようにします。忙しい経営層がレポートを読む時間は限られているので、最初の1ページで要点が掴めることを意識してみてください。
SNS運用のROIを可視化する方法
「SNSって投資対効果がわかりにくいよね」という声は、私がクライアントの経営層から最も多く聞く言葉の一つです。確かに、SNS運用のROI(投資対効果)は広告運用のように1クリック=○円と単純計算しにくい面があります。しかし、計測できないわけではありません。
ROIの可視化には、大きく2つのアプローチがあります。
直接効果の計測は、SNS経由のコンバージョン(問い合わせ、購入、資料請求など)を数値で把握する方法です。Google AnalyticsなどのWeb解析ツールでSNSからの流入を計測し、コンバージョンに至った件数や金額を算出します。たとえば「SNS経由の月間売上50万円 ÷ SNS運用にかかった人件費・外注費30万円 = ROI 167%」のように、ざっくりとした数値でも可視化するだけで、社内での説得力が大きく変わります。
間接効果の評価は、SNSが直接的なコンバージョンに至らなくても、認知拡大やブランド好意度の向上を通じて事業に貢献している部分を評価する方法です。たとえば、SNSで認知してから検索エンジンで指名検索して問い合わせに至るケースは、直接効果だけでは捉えきれません。指名検索数の推移やアンケートによるブランド認知率の変化を補助指標として組み合わせることで、SNSの間接的な貢献を可視化できます。
すべてを厳密に数値化する必要はありません。「完璧なROI測定」にこだわるよりも、まずは直接効果の数値を出し、間接効果は定性情報と組み合わせて補完するというバランスが実務的には現実的です。
KPI予実管理で運用の精度を高める
効果測定を継続的に事業成果に結びつけるためには、KPIの「予実管理」の仕組みを取り入れることをおすすめします。
予実管理とは、「予定(計画値)」と「実績(実際の数値)」を比較して差分を分析し、次の計画に反映するマネジメント手法です。
具体的には、月初にKPIの目標値を設定し、月末に実績値と突き合わせます。目標を達成できた項目は「なぜうまくいったのか」、未達だった項目は「何がボトルネックだったのか」を分析し、翌月の目標値と施策に反映させるサイクルを作ります。
SNSCHOOLが支援した鷲見製材様の事例では、事業KPIとSNS指標を連動させた予実管理の仕組みを構築しました。SNSのリーチ数やエンゲージメント率といった中間指標だけでなく、最終的な事業成果(来場予約数など)との相関を月次で追跡し、計画値とのギャップを毎月分析。このサイクルを継続したことで、SNS施策の精度が月を追うごとに向上し、事業成果への貢献を明確に示せる体制が整いました。
予実管理のメリットは、数値の「良し悪し」だけでなく、「計画の精度そのもの」が上がっていくことです。最初は目標値と実績値のズレが大きくても、3〜6か月ほど継続すれば、自社アカウントの成長ペースに基づいた精度の高い計画が立てられるようになります。
効果測定は、データを集めることがゴールではありません。そのデータを使って社内の理解を得て、予算やリソースを確保し、さらに成果を高めていくという好循環を作ることが、SNS運用を事業成果につなげる最大のポイントです。次のセクションでは、よくある質問にお答えしていきましょう。
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SNS運用ROIの計算方法とは?測定指標と改善施策を解説
SNS運用の効果測定でよくある質問
ここまでの内容を踏まえ、SNS運用の効果測定についてよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 効果測定はどのくらいの頻度で行うべきですか?
週次の簡易チェック(15〜30分程度)と月次の振り返り分析(1〜2時間程度)の2段構えがおすすめです。週次では主要KPIの変動をざっと確認し、月次でデータを俯瞰して翌月の改善施策に反映します。最初から完璧な分析を目指す必要はなく、まずは「毎週決まった時間に数値を確認する」習慣をつくることが大切です。
Q. 無料で使えるSNS効果測定ツールはありますか?
各プラットフォームの公式分析機能が、無料で使える最も基本的なツールです。Instagramの「インサイト」、Xの「アナリティクス」、TikTokの「インサイト」では、リーチ数・エンゲージメント率・フォロワー属性などの主要指標を確認できます。加えて、Google Analyticsを連携すればSNS経由のWebサイト流入やコンバージョンも無料で計測可能です。
Q. フォロワー数が少なくても効果測定は必要ですか?
必要です。むしろフォロワー数が少ない立ち上げ期こそ、効果測定の仕組みを整えておくことが重要です。少ないデータでも「どんな投稿がリーチを伸ばしたか」「どの時間帯に反応が良いか」を把握しておけば、アカウントが成長し始めたときに改善サイクルをスムーズに回せます。早い段階からKPIを設定して追跡する習慣をつけておくことで、成長期以降の伸びが大きく変わってきます。
Q. 複数のSNSを運用している場合、効果測定はどう管理すればいいですか?
プラットフォームごとに分けて評価するのが基本です。媒体によって指標の定義が異なるため(たとえばInstagramのリーチとXのインプレッションは別物です)、数値を単純に合算して比較することは避けてください。各媒体のKPIを個別に追跡した上で、最終的な事業KGI(問い合わせ数や売上など)への貢献度をプラットフォーム横断で評価する形が実務的です。
Q. 効果測定の結果、SNS運用をやめるべきだと判断する基準はありますか?
一律の基準はありませんが、6か月以上KPIの改善施策を継続しても事業KGIへの貢献が見られない場合は、運用方針の大幅な見直しを検討するタイミングといえます。ただし、「やめる」の前に、ターゲット設定やプラットフォームの選定自体が適切かどうかを見直すことをおすすめします。SNS運用が成果につながらない原因は、運用の質ではなく戦略設計にある場合も少なくありません。
まとめ — SNS運用の効果測定で成果を最大化しよう
本記事では、SNS運用の効果測定を「なんとなくの数値確認」で終わらせず、事業成果につなげるための一連のフレームワークを解説してきました。
効果測定の第一歩は、事業目標から逆算してKGI・KPIを設計すること。次に、Instagram・X・TikTokそれぞれのプラットフォームで「何を見るべきか」を正しく把握すること。
そしてデータをもとにABテストやPDCAサイクルを回して改善を積み重ね、その成果を経営層にも伝わるレポートとして社内に共有する。
この流れを仕組みとして整えることで、SNS運用は「やっている」から「成果を出している」へと変わっていきます。
まずは、自社のSNS運用における事業目標を改めて整理し、KGIとKPIを設計するところから始めてみてください。すでに運用中の方は、各プラットフォームのインサイト画面を開いて、今日の時点での主要指標を確認してみるだけでも、次のアクションが見えてくるはずです。
「効果測定の仕組みをゼロから設計したい」
「KPIは設定しているけれど改善サイクルがうまく回らない」
そんなお悩みがあれば、SNSCHOOLにご相談ください。KGI/KPIの設計から、媒体別の分析体制の構築、改善施策の立案・実行まで、効果測定を軸にしたSNS運用を一緒に作り上げていきましょう。