【放送局の視点からコンテンツ発信のコツについて】

著名人インタビュー

テレビ埼玉 営業局長
遠藤 圭介氏

田中)本日はよろしくお願い致します。
さっそくですがインタビューを始めさせていただきます。
個の時代と呼ばれる現代において、情報発信をするうえで意識することやコツはありますでしょうか?

遠藤)まずそもそも、どういった理由で僕をアサインしたのでしょうか?

田中)コンテンツビジネスに携わる、放送局の方の視点から、自身でコンテンツを発信していく事の重要性について、お伺いしたいと思いまして。

遠藤)なるほど

田中)今現在、SNSをはじめYOUTUBEやTIKTOK等のコンテンツプラットフォームが増え、発信に自由度が増したことにより、信用されるコンテンツと、信用されにくいコンテンツが散乱しているように感じます。
テレビ局さんは、やはりコンテンツを作成するにあたって「信頼」という所を重要視しているのではないかと思いました。
コンテンツにおける「信頼」について遠藤さんの考えをお聞かせ下さい。

遠藤)まず、放送局というのは、総務省からの許認可事業として、免許をいただいて、電波という国民共有の財産を使用して事業を行っています。
我々の事業は、公共性があるため、大きな社会的責任を伴う事業だと考えます。
テレビというのは、「エンターテイメント」であり「ビジネス」であり「ジャーナリズム」であり「テクノロジー」であり、この4つを組合わせたものがテレビ事業だと認識しています。
   
昔はテレビの「コンテンツ」というと「番組」だけでしたが、今は「イベント」や「映画」「ネット動画」「モバイル動画」等も出現しています。
そんな中で放送業界が抱える問題は、「1日24時間」という限られた時間を切り売りするしかなく、時間が「有限」であるという事です。
そこ以外でゲインを求める場合、「イベント」「映画」「グッズ」などで収益を高めることが必要なんじゃないかと。

いわゆる「放送内収入」と「放送外収入」という考え方です。
「放送内収入」というのはテレビ番組で生まれる収益で、企業間取引、BtoBにより得られるものです。
「放送外収入」はそれに付随するもの、もしくは番組以外で生まれる収益のことで、BtoC、BtoBtoCといった、視聴者を顧客とする考え方です。

やはり放送局というのは、利益を出し続けなければいけないと思っていて、その利益で、より良いコンテンツを視聴者へ提供していかなければなりません。
その「良いコンテンツ」という所で、ネットの動画とは違い、総務省の許認可事業として、影響力があるという事を頭に入れて、コンテンツを作っていかなければいけないなと思っています。

田中)遠藤さんは番組等のコンテンツにおいて、満足度を高めるための視聴者とのコミュニケーションの取り方や、情報を発信の仕方などで工夫していることはありますか?

遠藤)コミュニケーション能力で言うと「企業としてのコミュニケーション能力」と「放送局員、1個人としてのコミュニケーション能力」の2つがあると思っています。

双方で共通する事として、「コミュニケーション能力」というのは、自分が思っている事考えていることを、どう発信するかという事以上に、「聞き手」が何を望んでいるのかを理解することがとても大切だと思っています。

相手の言葉は「言葉通り」のものなのか「行間を読むべき」言葉なのか、をきちんと理解することの重要性は年々増しているように感じます。

放送局というのは「放送」を「送りっ放し」と書くことから、いつかは送りっ放しではなく、視聴者と双方向でコミュニケーションを取れるようになることを望んでいました。
かつては「視聴者の声」といえば、視聴者からじかに反響をお伺いするか。「投書」や「FAX」しかありませんでしたが、現在は、インターネット環境が整い、SNSが普及したことにより、番組内でSNSによる視聴者の声を、リアルタイムで放送したりと、放送局と視聴者との双方向のコミュニケーションが実現してきたことは非常に喜ばしいことだなと思います。

国が掲げている「放送と通信の融合」が日増しに実現している一方で、放送局側の視点では「放送が通信に飲み込まれている」、というように感じている場合も多々あります。
代表的な例として2018年もしくは2019年には、インターネットの広告の売り上げが、テレビの広告の売り上げを超えると言われています。
通信のマネタイズの伸びに対して、放送業界は通信と一緒になって、新しい価値を生み出すという事を、更に考えなければいけないなと思います。

それはマネタイズの話だけではなく、いかにして視聴者から「求められる」「必要とされる」コンテンツを生み出していくかを真剣に考えなければ、どんどん通信の方へ視聴者は流れて行ってしまうのではと危惧しています。
現代社会は「時間」というパイの奪い合いが行われています。
例えば「情報」を手に入れようとしたときに、「新聞」「雑誌」「スマホアプリ」「テレビ」という選択肢の中から、どのようにして「テレビ」を選択してもらうのか、テレビ受信機の平均視聴時間が年々減少しているのであれば、TVer等のスマホで見られるサービスを提供したり、というような工夫が必要になってきますね。

田中)現代のようにSNSなどが普及する前は、どのように視聴者の声をくみ取って番組制作に生かしていたのでしょうか?

遠藤)私がテレビ埼玉に入社した当初はインターネットもなく、携帯電話もなかったので、やはり先程挙げたような「電話」「FAX」「投書」や、FACE-to-FACEでの聞き込み調査がメインでした。

田中)現在のようにインターネットが普及する前の方々は、「人から聞いたことをキャッチアップする能力」が高かったと思いますか?

遠藤)自分で言ったことを否定するようなことを言ってしますが、あまり周り(視聴者)の意見を聞きすぎても、軸がないコンテンツになってしまうかなと思います。
インターネットが普及する前の放送局員やクリエイター達は「相手のニーズ」に応えること以上に「自分たちはこうしたい」という熱意があったように感じます。
現代は「マーケティング」や「分析」などが主流ですが、その頃の人たちは「こんなことしたら面白いんじゃないか」という、ある意味「視聴者不在」で、単純に作っている自分自身がいかに楽しめるか、ワクワクするかを大事にしていて、その楽しんでいる人の周りにさらに人が集まってくるという構図があったように感じます。

田中)現代のメディアやコンテンツが増えた事によって、自身で自問をする機会が減って自身を客観視する機会が減っているように感じるのですが、どう思われますか?

遠藤)客観視する機会が減っているかはわかりませんが、現代の人たちは「ボーっとする時間」ってあるのかな?という事は感じます。
私たちが若いころは通勤や通学など、一人でボーっとしている時間がありました。
食事をするとき、お風呂に入るとき、テレビを見ているとき、現代の人たちは常にスマホを見ているので、何をするでもなく一人で考え事をしたり、頭を整理する時間はあるのかな?と思うことはありますね。

田中)ありがとうございます。
次の質問をさせて頂きます。
人を選ぶ際に「選ばれる人」になるには、「選ばれるための価値(ブランド)」を築くにはどのような視点を持ったら良いでしょうか?

遠藤)放送局の視点で言うと、「放送局のブランド」をどう高めるかというのは、本当に死活問題です。
テレビ埼玉も2006年に「あなたにカンケイあるテレビ テレ玉」というキャッチコピーでブランディングをしました。
2006年というのは地デジ化を行った年で、キー局ではない独立局として、テレビ埼玉を「選んでもらう」ためには何が必要かと考えたときに、「独立局としての親しみやすさ」などをもっと発信していかなければならないなと思いました。

まずは、「テレビ埼玉」を認識して覚えてもらうことが必要だと思い、キャッチコピーを作って「テレ玉」という愛称と、卵のキャラクターを作りました。
それからキャラクターの歌を作ったり、看板車を作ったり、着ぐるみを作って、ゆるキャライベントに参加したりしているうちに、埼玉県内での認知度はかなり高まりました。
本当にやってよかったなと思いました。

放送局としての認知度が上がっていよいよ「放送」をどうしていこうかと考えました。
これまでのテレ玉は、埼玉にフォーカスして、埼玉に関係のないことはやらなくていい、というような勝手な解釈をしていました。
もちろん埼玉の放送局として、埼玉の地域情報を伝えなきゃいけないという使命はありますが、埼玉のことばっかり放送してればいいのかと言うとそうではなく、視聴者は埼玉以外のことも知りたいのではないか?と考えました。
例えば「ドラマ」「バラエティ番組」などです。

ではなぜ我々はそれをできないのか…
「そもそもお金がない」「構成や脚本も考えなければならない」など色々理由は上がりました、つまり「やりたいけどできないこと」だったと気付きました。
つまり、条件さえ整えばできる、と。
そのような同じ悩みを抱えている放送局が「千葉テレビ」「テレビ神奈川」「三重テレビ」「KBS京都」「サンテレビ」でした。

その6局が集まってお金を出し合って、製作委員会方式による番組作りを2006年頃からはじめ、地域色はあまり関係の無い映画やドラマ等のコンテンツを、今まで130作品以上作ってきました。
そのようなコンテンツを発信していくと、「独立局がなんかはねた企画してる」「テレ玉面白いじゃん」というような反応が多くあり、独立局のプレゼンスが上がっていくのを肌で感じました。

田中)では放送局という視点ではなく、「人」として選ばれるためには何が重要だと思われますか?

遠藤)「人」を選ぶ場合で言うと、利害関係ばかりではないですが、「求めている何かができるから」「求めている何かを知っている」から「あなた」を選ぶ。
というように、選ばれる人には、何らかのオリジナリティがあり、他と差別化されていて、選ばれる明確な理由があるのではないでしょうか。
なので、まずは「自分はどんな人なのか」を認識することが大切だと思います。

僕は新入社員に必ず「早くオリジナリティが発揮できるようになると良いよね」と言い続けています。
「あ~なんかこれって〇〇さんらしいよね」と言われるような仕事ができると、仕事がやりやすくなり、仕事の幅も増えていくのでとにかくオリジナリティのある仕事をするようにと言います。

そういった「らしさ」を作っていく上で大切な事は「Don‘t」の考え方かなと思います。
「これは〇〇さんらしくない」という事を極力やらない、という事がブランディングをする上で非常に大切だなと思います。
伸びしろを作るという意味で、あえてらしくないことをしてみるのも「あり」かもしれませんが、まずは自分らしさをどのように見出すか、その過程で「自分らしくない事」というのを全部はじいていく、というのがブランディングかなと。

田中)らしさを作るために「Don`t」以外に何かありますか?

遠藤)「〇〇さんらしいよね~」という感情は、「ポジティブな感情」の「共感」があったり、他人を幸せにする、楽しませるといった「社会貢献」や「他人にとって有益」なことをしているときに生まれると思います。

戦略的に「らしさ」を作るためには、「自分が何をしたいか」そのうえで「何ができるのか」を自問自答し、言語化していくことが大切だと思います。

あとは「他人とどう差別化するか」が重要で、「何」で「どう」差別化するか、その差別化の部分が「あなた」を選ぶ理由になります

「Needs」と「Wants」の話をすると、例えば「運動してのどが渇いたから何か飲みたい」は「Needs」に応える状態です。

「運動して喉が渇いたからポカリスエットが飲みたい」これが「Want」の状態です。

「Wants」に関してはその人にとって完全に差別化されています。
その他の清涼飲料水ではなく「ポカリスエット」にしかない「味」や「特徴」、「らしさ」を求めています。
そして「Wants」に応えると、その人「やっぱり自分の選択に待合はなかった、今後も同じ選択をしていこう」と、自分が選択したものに対して、信頼感がさらに深まっていきます。

テレビも同じで、「暇でだからなんかテレビを見よう」で選ばれるチャンネルは「Needs」に応えている状態で、
「暇だからテレ玉の番組を見てみよう」これが「Want」の状態で、これに応えられるコンテンツを作り、視聴者との信頼関係を構築していこう、与えた期待に応えていこう、という事です。

ブランディングをして、期待を持たれるという事は、その期待以上の何かを提供しなければならないという事でもあります。

ある本で読んだのですが、「やりたい事」「できる事」「すべき事」この3つが合わさることが出来ると、その人は幸せな人生を送ることが出来るといわれています。
しかし、そこまで行くのにものすごい努力と覚悟が必要です。
時間がかかるので、まずは「何をしたいのか」「自分はこれがやりたい」という成果設定が非常に重要です。

「現状+課題=理想」ではなく、「理想-現実=課題」という考え方を徹底し、で自身の成果を明確にしないと、何のために努力していて、どこまで努力すればよいのかわからなくなってしまいます。

登山を例に挙げると、「登頂」という目的があるから、今何合目であとどれくらい頑張れば良いかがわかるのです。
しかし、「登頂」という目的がないと、八合目でも「これだけ頑張ったからもういいや」「いや、でもまだ周りは歩き続けてる…」というように何のためにやっていて、どこを目指しているのか、わからなくなってしまいます。

ビジネスにしても、セルフブランディングにしても「自分は何を成し遂げたいのか」という成果設定は非常に重要だと思います。

特にアスリートの方やアーティスト、マーケッターや起業家もそうですが、「自分が何を成し遂げたいのか」「社会にどう貢献したいのか」「世の中に何を伝えたいのか」を常に考えながら活動した方更なるやり甲斐、モチベーションを手にできるのではないでしょうか。

田中)なるほど、ありがとうございます。
少し話が変わりますが、先ほどおっしゃっていた「現代人はボーっとする時間がない」という事が、自分の中の成果設定などをする時間も減ってきていると思いますか?

遠藤)ん~それはわからないですが、「ボーっとする時間」とは二種類あって、「退屈している」時間と暇な時間はちがうといわれています。
これは受け売りですけれども(笑)
「退屈」は満たされていない状態で、「暇」だからと言って「退屈」しているわけではないそうです。
「孤独と寂しさは違う」これは、ユダヤ人哲学者の言葉です。
孤独とは私が自分と一緒にいることだ。自分と一緒にいられない人が寂しさを感じて、一緒にいてくれる他者を求めてしまう。
だから自分と対話ができないんだ。孤独にならなければ人はモノを考えられない、孤独こそが現代社会で失われているのだそうです。
「ボーっとする時間」=「孤独」とするならば、現代社会は孤独になれる時間が少ない感じはしますね。
「孤独」は使い道次第で「幸福な時間」に変えることができるとも言いますし。  
僕は孤独な時間をインプットに使います。

田中)遠藤さんは美術館によく行かれるそうですが、それもインプットをするために行くのですか?

遠藤)インプットの目的もありますが、美術館に行くこともそうですし、台所に立つこともそうですし、普段の仕事で使わない部分の脳を使いたいというのが一番の目的です。
年を重ねていくと、新しい発見や新しい体験が減っていってしまうので、僕は常に新しいことに挑戦していたいし、新しい出会いをしたいし、新しいことを学んでいきたいと強く思うようにしています。
そういった新しい発見をした時の感動や面白さというものは、実は世の中の人の心を動かせるのではないかと思っています。

そのような情報を発信し、感動を与え、視聴者に何かしらの影響を与える、というのが放送局の理想的な在り方だと思います。

発信者として、1の情報を手に入れて1発信しても、視聴者の心を動かすことは難しく、10集めた情報を取捨選択し選りすぐりの1を提供する必要があります。

やはり発信する立場の人は、アンテナを広げ新しい何かに出会うために、孤独な時間を大切にすべきだと思います。

田中)成果設定について、「有名になりたい」「お金を稼ぎたい」など手段ではなく、具体的な成果設定のコツはありますか?

遠藤)やっぱり「人の知的好奇心を満たす」ことではないでしょうか?
人の知的好奇心を満たすようなスキルや考え方、経験などが知らず知らずの内にその人の「人間的な魅力」になっていくと思います。

人間的な魅力と考えると難しいですが、「自分はどうありたいか」という事を考えるのも重要かと思います。

アスリートやアーティストの方々が、情報を発信するときに心がけるべきことは、「発信してその先にどういう状況を作りたいのか」という事を考えて発信することが大事なのではないでしょうか?

田中)少し話をさかのぼりますが、「コミュニケーション能力をつけたい」と思っている人たちへ何か遠藤さんの視点からアドバイスはありますか?

遠藤)すごく当たり前な事ですが、言葉は発した方が良いですよね。
特に人とディスカッションする機会は意図的に設けた方が良いと思います。
映画を見に行くにしても、絵画を見るにしても、見て思ったこと、感じたことを言語化して人に伝えるという事が、コミュニケーション能力の向上に役に立つと思います。
あとは若いうちに、年配の大人や外国人といった、コミュニティーや価値観の違う方々とたくさんコミュニケーションをとることも大事かなと。
価値観の違いや、言語の違う人たちとかかわることで、コミュニケーションの幅が広がっていくのではと思います。

田中)なるほど。
本日は貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
今後のセルフブランディング支援に役立てていきたいと思います。

遠藤)ありがとうございました。

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