【バラエティー色のあるクリエイティブな企画力について】

著名人インタビュー

フジテレビ プロデューサー
矢﨑 裕明氏

田中)本日は、「クリエイティブな企画を考える」ということについて、インタビューさせていただきます。よろしくお願いいたします。

矢崎)よろしくお願いします。

田中)では早速質問をさせていただきます。
「人志松本のすべらない話」や「IPPONグランプリ」のプロデューサーをされている矢崎さんの視点から、クリエイティブな企画を考えるコツや、そもそもテレビ局ではどのようにして企画を立ち上げているのかお聞かせください。

矢崎)はい。まずフジテレビのバラエティー制作部に所属している社員は100人以上いて、それぞれが「やりたい事」を持っているというのが前提としてあります。
企画を通す方法としては、放送の決定権を持つ「編成部」という部署に企画書を提出するというのが一般的です。
では「どんな企画が通りやすいのか」というと、フジテレビの現状としてというよりテレビ業界全体として、ゴールデンタイムのファミリー層向けの企画が通りやすく、お色気などの企画は面白くても通りづらいように感じます。これは私見もありますが…

私たち制作部は、実際に自分が考えている「やりたい企画」を企画書に落とし込む作業と、それを「通る企画書に落とし込む」という2種類の作業があると思います。
その段階で自分が考えていることを通る企画書に落とし込むときに「第三者の目」を入れることが大事で、放送作家さんからアイディアをいただいたり、プロデューサーに意見を聞いたりして、自分の中で思い描いていたものを企画書へ落とし込みます。

田中)その放送作家さんやプロデューサーさんに意見をいただく時は、もともとお仕事で関係のあった方にお願いするんですか?

矢崎)それは2パターンあって、1つはADの頃、右も左も分からない頃からお世話になっている放送作家さんにお願いする、というのがスタンダードな方法ですね。
でもその方法だと結局同じ色のままなので、もう1つの方法としては、他局で自分の好きな番組や当たっている番組のエンドロールに出てくるような作家さんに、お声かけしてお願いするという方法もありますね。

田中)その他局の放送作家さんにお声かけするときは、どのようなルートで連絡を取るのですか?

矢崎)基本的に有名な放送作家さんは自分で会社を構えていることが多くて、ホームページがあれば普通にそこからコンタクトを取るという方法もあります。
また、制作会社というのはフジテレビで番組を作っていて、日本テレビでも作っているということがあるので、その制作会社の方を伝って、紹介していただくという方法もありますし、もちろん個人的につながっているという場合もあります。

田中)なるほど、先ほどおっしゃっていた「自分のやりたい企画」というのは日々ネタ帳に書き込んだりしているんですか?

矢崎)そうですね、何か思いついたら1行でも1フレーズだけでもメモしますね。
そしてそれをまずはペライチくらいの文量で企画書ベースに落とし込みます。

田中)企画書にしていく際の、項目はどのようなものがありますか?
「ターゲット」などですか?

矢崎)僕はよく企画会議で「この番組は何を見せたいの?」と言われるんです。
僕の考えなんですが、テレビ番組はなんでも入っている「幕の内弁当」じゃダメで「唐揚げ弁当」とか「ステーキ弁当」のようなイメージで作ると良いと思っています。
やりたい企画がありすぎて全部を詰め込んだ企画書にしてしまうと「この番組は結局何が見れるの?」となってしまいます。
なので「何を見せたいか」とその次に「誰に見せたいか」を企画書では一番考えるようにしています。
あとは、番組の顔となるMCをだれにするか、というキャスティングも非常に悩みますね。

田中)これは私が個人的に思うことなんですが、嵐や松本人志といった、SNSのインフルエンサ―やYouTuberとは一線を画すような、いわゆる有名人と呼ばれる人は、YouTubeよりもテレビで見たいと思いますし、テレビで見た方が面白さが伝わってくる感じがするんですよね。

矢崎)そうですね。
やはり、企画書でもキャスティングはすごく大事で、企画書の1枚目にキャストの顔写真を貼るくらい重要ですね。

田中)矢崎さんは人をキャスティングする際に、どのように選ぶのですか?

矢崎)自分が企画書に落とし込む前に、イメージしている時点で「この人で行きたい」というようなイメージもだいたい固まっています。
そこからそこに第3者の意見をいただいたり、キャスティング会議でそのMCを誰と組ませたら新鮮に映るか、というようなことも話し合って決めます。

田中)大物司会者や、レギュラー番組に出ているような芸能人ではなくて、メインMCをやったことがないような芸能人をアサインするときは、どのように判断しているのですか?

矢崎)いろんなパターンがあるんですけど、他局の番組でもちょっと頭角を現してきたなっていう人は思い切ってアサインすることもありますし、メインMCを決めてからそのメインMCに「今伸びてきてる若手の芸人さんいませんか?」と聞いて、その人の映像を見て面白ければアサインすることもあります。
あとはSNSで声を拾ったりしているプロデューサーもいますね。
また、深夜番組とかでニッチな分野のキャスティングをするときは、自分の周りにいるスタッフやアシスタントの人たちの中から、その分野のいわゆる「オタク」を探して、情報を集めます。
あと放送作家さんはやっぱりキャストについても詳しいですね。劇場とかもよく見に行かれているので、まだテレビには出てないけど劇場でめちゃめちゃウケてる芸人さんなんかをよく知っているので、キャスティングも放送作家さんに聞くことが多いですね。
キャスティングは自分でどうにかしようとするんじゃなくて、周りの人から情報収集しますね。ネットで検索しても出てこないので。

田中)その人脈の幅がすごく重要なんですね。

矢崎)そうですね。飲み会とかすごく面倒くさいと思ってたんですけど、今になって「あの飲み会でこの人と繋がってなかったらこの企画実現しなかったな」ということがたくさんありますね。

田中)なるほど、ネット上の関係だけでなく、リアルでの繋がりがないとテレビ番組はつくれませんね。
次の質問なんですが、矢崎さんの思う「フジテレビらしさ」というのはなんですか?

矢崎)良いか悪いかは別にして、世間一般的に「若い」というか「これは大人が考えた企画なのか??」というような番組をやっているのが「フジテレビ」のイメージじゃないでしょうか?笑
でも意外とフジテレビはコンプライアンスも含めてちゃんとしていて、何よりタレントさんに対するリスペクトがすごくある会社だと思います。
「どうしたらその人がオイシくなるか」ということをどのチームもすごく考えています。
他局の番組で、タレントさんがものすごい大変なロケをしているのに、あまりウケなかったから放送ではナレーションだけで5秒程度のオンエアしかない、というような編集をしていました。
フジテレビで育った僕としては「あれだけタレントさんが頑張ったから少しでも使ってあげたい」と思ってしまうんですよね。
放送物として視聴者がどう感じるかということを客観的に判断しなければいけないのですが、タレントさんと二人三脚で番組を作っていくといったところが「フジテレビらしさ」かなと思います。
だから「スマスマ」「とんねるず」「めちゃイケ」とかのタレントの冠番組が長く続くのかなと思います。

田中)「フジテレビって意外とちゃんとしている」というのが驚きでした。笑
私が学生の頃は、フジテレビの番組は1時間笑い続けて見ていたので。

矢崎)そうなんです。笑
でも今は少し、いわゆる「昔のフジテレビ」というものが薄まってきているような気がします。昔は番組をつけたら「あーこれはフジテレビだ」ってわかったじゃないですか?
今は少し他局に寄っていっちゃっている感じはありますね。
2011年頃まではバラエティはフジテレビが1位だったので局内の別のチームのあの番組面白かったな!ってなって、その番組のエッセンスを取り入れたりしてたんですが、今は他局が1位なんで、無意識的にそっちに寄っていってしまってるかもしれないですね。
もちろん現場の僕たちは、他局に寄せて作ってるつもりはありません。

田中)フジテレビの番組は見るだけで、フジテレビだなとわかるような面白さがありますよね。
先ほどおっしゃっていた「タレントさんに対するリスペクト」というのは具体的にどのようなことがありますか?

矢崎)具体的には、環境作りですね。
タレントさんが現場のスタッフになんでもいいやすい環境を作るということです。
1番まずいのは、お互いに距離があって「ほんとは俺こうしたいんだよな」というようなことを演出家もMCのタレントさんも言えない状態です。
そういったことを重苦しくならずに言えるような雰囲気や環境を作るということです。
あとは、個人的に演者さんからどう信頼されるかという所ですね。
信頼のされ方って人それぞれで「バリバリ一生懸命仕事をして信頼を得る人」「仕事終わりに朝まで飲んだり麻雀をやったりして信頼を得る人」だったり、逆にオーデションを受けに来るような若手にも将来有望な若手にも「一切の隔たりなく接することで信頼を得る人」だったり、いろいろあって、個人的なコミュニケーション能力はやっぱり大事ですよね。

田中)なるほど、最終的にタレントさんとの個人の信頼関係が大事になるんですね。
企画を編成部に提出して却下された後に復活する企画とかもあるんですか?

矢崎)もちろんあります。
でも、1回ダメになった企画はダメになった理由があるわけで、そこをブラッシュアップして練り直せば何回でも受け取ってくれます。
これはどんなことでも言えると思いますが、何回ダメになっても練り直して提出し続けるような熱意のある人の企画は最終的には通ったりしますよね。もちろん通らない時は通りませんけど。笑

田中)意外としっかり練り直せば、何度でも提出し続けられるんですね。
そのように企画が通ってから、その番組はどのようにしてレギュラー番組になっていくのですか?

矢崎)最低3回くらいは単発で放送して結果が出れば、レギュラーに上がれるものもありますし、3回で終わってしまうのもあります。レギュラーまでの道のりは長いですね。

田中)レギュラー化するかどうかの判断基準は視聴率ですか?

矢崎)視聴率だけではないですね。
少し細かい話をすると、だいたい第1回の放送は関東ローカルで、深夜か土日の昼とかの枠なんです。
そうするとPRが打てないのでその番組を見るきっかけがなくて、たまたま見た人が面白いと感じるかどうかになってしまう。
そういったことも含めて、単純に「面白いか面白くないか」という社内判断もすごく重要になります。もちろん1回目2回目から数字が取れていれば絶対に人気になりますけどそうじゃないことの方が多いので、「この番組なら当たるだろう」と思わせるための社内アピールも大切ですね。
あと、最近だとSNSなら広告費もそこまでかからずにPRできるので、新番組のPRには利用しています。

田中)ではゴールデンやレギュラーに上がる番組というのは、最終的には社内判断なんですね?

矢崎)まぁ結局社内で力のある人が推してくれるという形ですね。
でも社内の判断だけではありませんよ?もちろんそこに至るまでに視聴者の声とか、SNSでの評判なども加味されます。
最終的には決定権のある役職者が「この番組ならいける」と思うかどうかですけどね。

田中)ネットとはまったく違いますね。
ネットだと「いいね」や「リツイート」の数字でそのコンテンツや発信者に対する評価が決まってしまったりするんで。

矢崎)確かに全く違いますね。
極論、編成部の判断で決まるので。

田中)最後の質問になりますが、「こんな番組を作っていきたい」というような今後の展望はありますか。

矢崎)テレビ局って「ドラマの班」「バラエティーの班」「バラエティのお笑いの班」「音楽の班」というように別れていて、その班の中で1つの番組を作っていきます。
でも、せっかくフジテレビという大きな会社に入って、同じ番組制作部なのでその班の垣根を超えた番組を作りたいと思っています。
例えば「バラエティーとドラマと音楽」を合わせた番組とか。
それらを1つにまとめるのはすごく難しいですけど、そういう番組を作りたいですね。
あとは「教育系の番組」をやりたいですね。道徳系の。
小学生が習う5教科って全部テレビ番組として落とし込めてるんですけど、「道徳」だけテレビ番組に落とし込めてないんです。
普通に真面目にやっても面白くないので、どうにか工夫して面白く道徳の教育番組をやりたいですね。

田中)道徳を学べる番組って確かにありませんね。
やっぱり子供がネットに入り浸っていると、たとえ道徳系の学習ができる動画か何かを見ていても親御さんは心配してしまいますが、テレビで子供と一緒に勉強できるような番組があったらすごく健全な形で学べるのかなと思います。
さらにフジテレビさんでそんな番組があったらなおさら面白そうです。

矢崎)そうなんですよ、普通の教育番組の企画書を書いたら、NHKになってしまうので、「フジテレビらしさ」のある教育番組を作りたいですね。

田中)あと先ほどおっしゃっていた、部署を超えた番組制作というのは、現実的に今は難しいのですか?

矢崎)いやそんなことないです。
実際昔よりもそういった番組制作をすることは増えています。
例えば、ドラマとバラエティで言えば「スカッとジャパン」なんかがそうですよね。
でも、僕が思っているのはもっと「ガチ」なドラマの演出家の方と組んでバラエティを作りたい、さらに音楽班にも協力してもらって、その3つの得意なところを発揮したらどんなものができるのかなって、まだ大枠しか考えてないですけど。
僕が考えてることはきっと世の中の誰かも考えていて、どっちが先にやるかの勝負になりますね。

田中)そうですよね、どんどんコンテンツもアップデートしていかなければいけませんよね。

田中)本日はテレビ局プロデューサーの視点から、貴重なお話や番組制作の裏話までお聞かせいただきましてありがとうございました。

矢崎)ありがとうございました。

無料診断キャンペーン実施中!

ソーシャルメディアマーケティングに10年以上携わっているプロのSNS診断を、無料で受けていただけます。(※初回限定)
集客目的のSNSはもちろん、リモートワークツールなどの社内SNSに関するお悩みにもお応えしております。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

関連記事一覧